ある事柄に関して「価値」を実感した経験がない人間は、

その事柄に関する選択を、極めて軽率に行う。
何をどう選ぼうと、どのみち価値など得られるはずがないと思っているからだ。
一方その事柄に関して、他者から特定の「価値」を根拠に特定の選択を薦められると、手のひらを返したように慎重になる。
これは一見矛盾する態度のように見えるが、実はいずれもその事柄がもたらす価値を信じていないという点において一貫している。
後者のような事態がなぜ生じうるかというと、当人にとってその他者は、「あるはずのない価値を振りかざす人間」であり、だからこそ全く信頼するに値しない、と判断されるからだ。